IFRS(国際財務報告基準)と日本基準の差異のうち,売上計上基準に係るものについて見ていきます。
以下,日本基準についての記述はピンク色,IFRSについての記述は青色としています。

1.収益認識の一般原則(IAS18)
収益は,商品等の販売または役務(サービス)の提供によって実現したものだけを認識します。これを実現主義の原則といいます。
なにをもって収益とするか,実現とはなにかという定義はありませんが,一般には,実現とは商品または役務の提供とそれに対する貨幣性資産の受領であるとされています。

IFRSでは収益について以下のように定義しています。
収益とは資本参加者からの拠出に関連するもの以外で,資本の増加をもたらす一定期間中の企業の通常の営業過程で生ずる経済的便益の総流入をいう。
その上で,収益認識の一般原則は,将来の経済的便益が流入する可能性が高く,信頼性をもって測定できることとしています。

2.収益の形態別認識基準(IAS18)
日本基準では,形態別の認識基準に関する規定はありません。ただし,実現主義を基礎として,販売基準・引渡基準・出荷基準等の認識タイミングの問題として議論されることがあります。

IFRSでは,物品の販売および役務(サービス)の提供から得られる収益あるいは利息・ロイヤルティ収入について,その認識基準が示されています。
(1)物品の販売
・所有に伴うリスク及び経済価値が買い手に移転した
・物品に対する有効な支配関係が消滅した
・収益が信頼性をもって測定可能である
・経済的便益の流入する可能性が高い
・原価を信頼性をもって測定できる

(2)サービスの提供
・収益及び原価が信頼性をもって測定できる
・経済的便益の流入する可能性が高い
・取引の進捗度を信頼性をもって測定できる場合に,
・取引の進捗度に応じて収益を認識する

(3)成果の見積りが不可能な取引
・費用が回収可能と認められる範囲でのみ収益を認識する

(4)割賦販売(延払契約)
・収益の測定は受領した対価の公正価値で行う
・割賦販売等の金融取引を含む場合は,対価をみなし利率等を用いて割り引き,利息部分を分離する

3.工事契約(IAS11)
従来の日本基準では,完成基準を基本として進行基準を適用することが認められていました。200941日以降に開始する事業年度からは,工事契約に関する成果の確実性が認められる場合は進行基準を適用しなければなりません。ただし,一定額に満たない工事契約及び工期がごく短い契約については完成基準の適用も認められます。

IFRSでも,工事契約に関する成果を信頼性をもって見積ることができる場合は進行基準を適用しなければなりません。ただし,日本基準とは異なり,完成基準は認められず,発生した工事契約原価のうち回収可能性が高い部分についてのみ収益を認識することができます。

IFRS導入にあたっての留意事項
顧客との契約内容や取引条件はさまざまです。IAS18は収益認識・測定についての基本的な考え方を示すもの(プリンシプル・ベース)であるため,IFRS導入に際しては,顧客(買い手)とのリスク移転に関する条件や物品の出荷とリスクの移転についての実質,買戻し条件や取引慣行をどのように考えるべきか等,取引類型ごとに売上計上基準の妥当性を検討する必要があると思われます。