IFRS(国際財務報告基準)と日本基準の差異のうち,無形資産に係るものについて見ていきます。
以下,日本基準についての記述はピンク色,IFRSについての記述は青色としています。

1.定義(IAS38)
日本基準では,無形資産についての定義はありませんが,財務諸表等規則28上に例示列挙されている無形固定資産に次のものがあります。
のれん,特許権,借地権,地上権,商標権,実用新案権,意匠権,鉱業権,漁業権,入漁権,ソフトウェア,リース資産(のうち特定のもの),その他の無形資産(のうち特定のもの)
IFRSでは,過去の事象の結果として企業が支配する物理的実態のない識別可能な非貨幣性資産で,将来の経済的便益が当該企業に流入することが期待されるものと定義されます。

2.取得時(当初認識時)の処理(IAS38)
日本基準では,認識基準に関する規定はありません
IFRSでは,将来の経済的便益が企業に流入する可能性が高く,その取得原価を信頼性をもって測定できる場合には,当該無形固定資産を認識する必要があります

3.研究開発費(内部創出される無形資産)(IAS38)
日本基準では,研究開発費はすべて支出時(発生時)に費用化する必要があります
IFRSでは,開発費のうち次の要件を満たすものは無形資産として認識されます。
1)無形資産を完成させ使用又は売却することが技術的に可能性である
2)無形資産を完成させ使用又は売却する意思がある
3)無形資産を完成させ使用又は売却する能力がある
4)無形資産が将来どのような経済的便益をもたらすかを説明できる
5)無形資産を完成させ使用又は売却するための技術的・財務的・その他の資源をもつ
6)開発期間中の支出について信頼性をもって測定できる

4.当初認識後の処理
日本基準では,有形固定資産の場合と同じように,償却を行います。取得原価から償却累計額(及び場合によっては減損損失)を控除したものが,その時点での資産の価額になります
IFRSでは,有形固定資産の場合と同じように,原価モデルと再評価モデルのいずれかを選択することができます。
原価モデルの場合,有限の耐用年数を有する無形資産については,その期間で償却を行いますが。耐用年数を確定できない無形資産については,償却を行わずに毎期減損テストを実施します
再評価モデルは,無形資産の公正価値を決定できる活発な市場が存在する場合に適用することができます

IFRS導入にあたっての留意事項
IFRSにおける無形資産の定義を適用すると,日本基準で例示列挙されているもの以外にも無形資産として計上すべきものが認識される可能性があります(無形資産の範囲の拡大)。開発段階での支出が内部創出の無形資産として認識される場合などはこれに当たります。
無形固定資産の償却については,確定決算主義の影響もあり,税法上の耐用年数を使用し,また償却方法も定額法が多く用いられています。
IFRSでは,原価モデルを採用する場合でも,耐用年数について精査する必要があります。
この点で,IFRS導入に当たっては,償却に対する方針を明確にするとともに,会計と税務との乖離が生じる可能性があるので,固定資産情報の管理について留意する必要があります。